どんな業界でもそうですが、ネット上の世論ってあります。目だって発言をする人がいると、その世論に消費者の価値観が寄っていくんですね。もちろん、その発言が正しいことが前提です。
墓石に関する消費者向けの情報源としては、ネット上でも最も影響力がある富山県のお墓の営業マン宮崎さんの提唱する『お墓の芝台は1枚もの、更に水垂れがつけば尚良い』という提言は、まさに正論です。
正論ですが、全国一律で当てはめるのは、地域差もあるし、諸事情があるし、無理があるとも感じます。正直な話、国産墓石だと芝台に水垂れ加工までつけると高額になるし付ける必要もないと感じます。
芝台とは、墓所の中心にドン!と建てる石塔の一番下の台、一般的にはカロート(納骨堂)の蓋の役目も果たす部分です。
水垂れ加工とは、水が溜まらずに流れるように勾配をとった加工です。
中国加工だと、やくもの加工と呼ばれる手間の掛かる加工にも追加料金が発生しないというちょっと冷静に考えるとおかしいのですが、当たり前になってしまっているルールがあります。
それでも、徐々にプラス料金を取るようにはなってきましたが、そのルールが当たり前になってしまうと、国産墓石がぼったくりのように感じてしまうこともあるようです。
墓石小売店さんから『国産墓石は高過ぎる』とよく言われます。うちらからすると中国産墓石こをルール違反で、勘弁して欲しい話ですが。
それだけ中国産が当たり前になってしまっているということですね。悲しいことです。
先日は、稲田石で100基分の洋型の墓石の芝台を受注しましたが、これは水垂れなしです。
東京では、4つ合せの芝台のお客様もいらっしゃいます。4つ合せだと、真ん中に穴が開く形になり、石を使用する量が減るので、お安くなります。
庵治石や本小松石のような高額な石種になると、お墓をつくるのにも知恵をしぼります。
お墓を購入する上で、何を重要視するのかは消費者それぞれです。我々は、日本の石工にお墓をつくって欲しいというお客様のために知恵をしぼって提供しています。
のっけから不満入り乱れたややこしい出だしになってしまいましたが、無垢の1枚ものの芝台と4つ合わせの芝台のメリットとデメリットに触れてみたいと思います。
お墓の芝台の形をコスト順に並べてみました
お墓に使用される芝台、コスト順に並べると
1枚石水垂れ付き芝台 > 1枚石 芝台> 4つ合せ芝台
になります。左側の1枚石水垂れ付きが一番高額になります。
これを構造的・機能的に優れている順に並べても同じ順位です。
1枚石水垂れ付き 芝台> 1枚石芝台 > 4つ合せ芝台
1枚石水垂れ付きが一番優れているということになります。
1枚石水垂れ付きが構造・機能的に優れている理由
それでは、1枚石水垂れ付きの芝台が何故優れているのでしょうか?ポイントは3つあります。
- 4つ合わせでつなぎ合わせるよりも無垢の1枚石の方が強い
- 目地があるので見た目に無垢の方が良い
- 水垂れが排水を促し、水はけが良くなる
順に説明していきます。
①4つ合わせでつなぎ合わせるよりも無垢の1枚石の方が強い!
これは、その通りですよね。一枚で芝台をつくるということは、無垢の一つの石ということです。切った石同士をつなぎ合わせるよりも構造的に強いことは、明白です。
4つ合わせで繋ぎ合わせる場合は、金具でボルトで締めたり、強力なボンドで接着するので、気にするのも馬鹿らしいくらいの期間は問題なくもちます。
そもそも4つ合わせの芝台のお墓は、極狭地を中心として多く、東京都内では多くみかけます。昔は、金具やボンドも発達していないにも係らず、問題なくもっているお墓がほとんどです。
とはいえ、東日本大震災や神戸淡路地震、熊本地震クラスの巨大地震があれば動く可能性が大です。
地震に関しても、最近の工法でつくった4つ合わせの芝台なら、地震にあっても1枚ものとさして差がありません。
②目地があるので見た目に無垢の方が良い
石を繋ぎ合わせると、目地という石と石とのつなぎ目ができてしまいます。これは、個人の好みの問題もあり、まれに目地が多い方が、良いという方もいらっしゃいますが、なるべく目地がない方がすっきりして見た目が良いと感じる方が多いようです。(主観)
③水垂れが排水を促し、水はけが良くなる
石は硬いスポンジのようなものです。吸排水を繰り返し、表面にホコリが付いていれば、そのホコリごと吸水し石材内部に閉じ込めてしまいます。
また、吸排水を繰り返すと様々な化学反応も起こしやすく、劣化の仕方に差が出ます。できるだけ水は遠ざけた方が良いのです。
芝台は、比較的水が留まりやすい場所です。水垂れを設ければ排水を促し、水はけが良くなります。国産墓石だとこの水垂れを設けただけで、そこそこの加工賃が上乗せされます。
ただし、芝台が水を留めやすいとは言っても、水垂れがなくてもそこまで劣化が顕著に表れる場所でもありません。
劣化が表れるのは、もっと水を吸いやすい、お墓の足元の方の日陰で風通しも悪い場所だったりします。そこまで気にされることもないというのが、個人的な考えです。
国産墓石を扱う立場からの意見としては、問題なのは、水垂れをつけると、ゴテゴテしてきてしまう点です。
国産墓石はどちらかというとスッキリしていて、品の良い石そのものを味わうものです。装飾の多い加工は、どちらかというと中国から輸入されてきた考えで、あまり日本的ではないと感じます。
浅草浅草寺と横浜中華街、北京ダックと焼き鳥の差のようなものでしょうか?お刺身のようにシンプルで素材の持ち味を楽しむのが日本です。
お墓も本来は、そのようなものでしたが、中国産墓石が8割以上を占めるようになり価値観が変わってきてしまった部分もあると感じます。
でも、もったいないですよね。せっかくの国産墓石の良さを消してしまうのは。
芝台の水垂れ加工も、国内加工でもできますが、あまりする必要はないと感じます。(主観)
まとめ
国産墓石をつくる立場から、富山県のお墓の営業マン宮崎さんの提唱する『お墓の芝台は1枚もの、更に水垂れがつけば尚良い』についての検証をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
立場が違えば言うことも違うで、消費者を混乱させるような記事になってしまいましたが、石屋さんの数だけ、こだわりや価値観もあるわけで、ある意味押し付けがましくなってしまい申し訳ありませんでした。
私が勤める会社は、お墓の加工卸なので、様々な立場の様々石材店に卸しています。それだけ様々な拘りや価値観にも触れます。それが、お墓の加工にも反映される(金具の位置やアンカーの穴あけ位置など)ので、面白いと感じます。
宮崎さんの『お墓の芝台は1枚もの、更に水垂れがつけば尚良い』については、石屋さんの間でもけっこう話題になることも多く、自分なりの主観で記事を書かせてもらいました。
こういった意見を通じて、更なる石材店の切磋琢磨、技術力の向上、そして顧客満足度の向上につながっていけばと思います。大げさかな?
この記事は、2015年3月に書いて、現在2017年3月に加筆修正しています。2年の間がありますね。
SEO的な観点で、ドメインパワーを上げるために、誰が読んでくれるかもわからない過去記事をコツコツと編集しています。
宮崎さんが見かけてくれるかわかりませんが、もし読んでいただいたなら、コメントに一報をくださるとありがたいです!
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