石屋さんに長年勤めていますが、見ていてハッとする素晴らしい作品に数多くであってきました。
石屋さん冥利というか、役得というか、恐らく、今の職についていなければ、しみじみと作品の良さを味わうこともなかったし、知らなかったかもしれません。
石の作品って、けっこう日常に溶け込んでいるんですよね。
燈籠でも何でもそうだけど、日常に溶け込み、それでいながらわびさびがあります。
自分が主役でドーンと主張する作品があれば、陰日向で、目立たないながらもお庭なんかを引き立てる作品もあります。
それぞれに石の良さがあり、神秘的な魅力に引き込まれます。
今日は、そんな作品の一つで、とても印象深いものを紹介します。
それでは、
ブラジル糠目石で作った石の彫刻!繊細で生きているかのようなカエルのいる水鉢
をお送りします。
まるで生きているかのようなカエルの石彫刻
石工が魂をこめてつくった作品には魂が宿ります!
なんて言って、ちょっと大げさな話かもしれませんが、丹精をこめてつくった素晴らしい石彫刻を見ていると、本当にそんな気に思えてきます。
羽黒石材工業の石工、若林がつくったカエルのいる水鉢ですが、何ヶ月もかけて、精魂をこめてつくりあげた作品です。
使用しているのは、日本では珍しい『ブラジル糠目石』
以前に、墓石小売店にお墓の加工卸をしている弊社で、独占販売する石種として、ブラジルから多く輸入していた石です。
恐らく、現在の日本では、弊社ぐらいしか取り扱っていないかもしれません。
それぐらいマニアックな石です。
糠目独特の色合いがキレイで、若干青みを帯びています。
その青みがカエルやハスの葉を表すのに合うということで若林が採用しました。
磨いてあるハスの葉とカエルの青さが良くでているかと思います。
この色合いの感じを若林は思い描いて作品をつくりました。
石彫刻を創造する場合、石種の選定も大切になってくるのです。
ブラジル糠目石、糠目という名の通り、目が細かく、彫刻に向いています。
この石の弱点は、吸水しやすいことです。お墓に利用するとけっこう目立ちます。
ただ、その濡れ色がけっこうきれいなんですよね。
ずっと濡れ色のままでいて欲しいくらい。
水鉢は水を吸いっぱなしになるので、濡れ色も楽しめます。
石の性質を理解していると、そういった楽しみ方もあるんですね。
カエルに合う青みの強い色合いの石って中々ありそうでないんです。
このカエルさん、表情がとっても良いと思いませんか?

リアリティのあるカエルです。本物に近づけて作ってあるそうです。
タバコの箱よりも小さいサイズですが、そのサイズの石の彫刻で、これだけのものを詰め込みます。
かわいらしいカエルですが、このカエルをつくるのに、相当な技術を要するのです。


石で生物や植物の質感を出すのは非常に困難です。水鉢は、お庭に置いてあって、どちらかというと主役というよりは、目立たない脇役です。
だけど、その水鉢に良くみるとこれだけの技術がつぎ込まれています。

ハスの葉は磨いてあるので、墓石にした際のブラジル糠目石の石目がよくわかります。
きれいな色ですよね。墓石としても人気がありました。
茨城県には羽黒糠目石という、糠目石で有名な石がありますが、いかんせん、価格が高いです。
その代替品ではありませんが、同じ糠目で目の細かい『ブラジル糠目』は、東京の小売店さんで、けっこう人気がありました。
このブラジル糠目石、大変好評で、以前は大手石材店独占販売石種ということで墓石として、かなりの数を卸していました。人気があり、非常に良く売れたそうです。
中国産墓石が台頭してからは、国内の石材加工業社ということで、差別化として国内の石を加工することがメインになり、あまり日が当たらなくなりましたが、良い石には変わりありません。
『ブラジル糠目石』しばらく扱う機会がありませんでしたが、東京の石材店様で販売したいというお客様がいらっしゃいました。
ブラジルから輸入するということで、当時、弊社ではコンテナ満載になるまで原石を大量発注していました。今でも在庫が山積みになっています。
弊社としても在庫として原石の山を抱えているよりは、多少価格を下げても販売した方がいいです。
糠目と言うと高額なイメージがあるかもしれませんが、このブラジル糠目においては在庫整理の意味もあるので破格の価格設定になっています。
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